2015年10月02日更新
「まち」を「つくる」:COMICHI石巻 ー災害後のまちづくりを考える
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2015年08月09日
2015年3月、仙台にて開催された国連防災世界会議でIT DARTのワークショップに参加してユレッジにてレポートしました。8月8日、一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)が創立され、その総会とワークショップが行われるということでしたので、ユレッジで再度取材に伺って来ました。
「情報支援レスキュー」という言葉を聞いた時に、皆さんどういった内容を思い浮かべるでしょうか。IT DARTのDARTとは「Disaster Assitance Response Team」の略称で、私たちは、災害発生時に迅速に被災地に赴き、情報の収集・活用・発信に関わる支援活動を行う「情報 × ITの緊急支援チーム」とWebサイトでは説明されています。
その上で、IT DARTの設立趣意に目をやると「情報の空白地帯」という問題提起があります。
現代社会では、私たちの生活は情報サービスやネットワークなどの情報活用の仕組みなくしては成り立ちません。しかし、大規模な災害が起きると情報ネットワークが十分に機能せず、「情報の空白地帯」が発生します。それによって緊急支援が滞り、被災者はきわめて不自由な生活を余儀なくされることが、阪神・淡路大震災や東日本大震災などの経験からわかってきました。
今回総会、それからワークショップに一般参加して、「情報の空白地帯」という言葉は、地図上にぽっかり浮かんだ空白を想像する方も多いだろうと思うのですが、それはもう少し3次元的なものな気がしました。それは後ほどワークショップを振り返りながらご説明したいと思います。
総会に同席させていただいて、一つ大事なことだな、と感じたのは、IT DARTというのは「チーム」だということです。例えば、ユレッジは地震防災にかかる告知啓蒙をしていくためのメディアであり、プロジェクトですが、そういうことと比べると、IT DARTは人の集団、つまり「チーム」であることが重要なのだろうと思います。IT技術者をはじめとして、「情報 × ITの緊急支援チーム」として被災地での情報の収集・活用・発信に関わる支援活動を行う人の集団を組織して、機能させ、実効力を持たせる、ということが、いわゆるプロジェクトが立ち上がった、ということとは少し違って、そのための総会だったな、と理解しました。
今回、岩手県陸前高田市役所 復興対策局 大和田智広さん、宮城県 多賀城市 総務部 交通防災課 消防防災課係 主査 豊嶋茂一さん、茨城県 広報監 取出新吾さん、3名の方々のお話がありました。
陸前高田市では被災後、避難所の通信が途絶え、「生まれてこの方、こんなに不便な状況に陥ったことがなかった」という大和田さんのお話が印象的でした。マスコミを通じてしか外部に陸前高田の情報が届かないこと、また、ネット・リアルにかかわらず情報統制が取れないことで、誤報の火消しに奔走されたお話もうかがいました。
多賀城市の豊嶋さんは特に自治体との協定について、多賀城市の現状を鑑みながら、「その時」だけでなく、担当者が変わっても引き継がれていくパートナーシップの重要性のお話がありました。また、「ITは魔法の杖ではなく、ただの杖」という言い方をされていましたが、ITへの拒絶反応、押し付け的な印象、逆に、過剰な期待や、何でもできるという誤解など、外部から現場に専門分野で関わる上で障壁となるであろうことを提示されていました。
茨城県で広報監をされている取出さんは、多賀城市の豊嶋さんもそうですが、元々民間のIT関係の職場にいた方だったそうです。リタイア、ないし、Iターン・Uターンの形で、民間を経験した方が防災の現場におられることも窺い知れました。創立総会、理事会の後に、来賓の挨拶として、東日本大震災の被災地の現場に近い方々のお話があったことは、今回のIT DARTの創立を理解する上でも示唆的だったと思います。
今回もワークショップが行われました。トピックは「自治体などとの協定について」「必要とされる情報システムについて」「行動規範、ポリシーについて」「IT DARTの発災時の初動について」と4つのグループに別れ、僕は「必要とされる情報システムについて」のグループに参加しました。
震災以降も含めて、世の中にはIT DARTの他にも様々なプロジェクトが走っています。また、災害対応に特化してないものも含めて、サービス、企業、様々な情報システムが世には既にあります。その上で、自前で用意しなければならないものはあるのか、というところで、様々な支援団体から情報をインキュベートし、整理・編集して、一元的に参照・共有するための「ダッシュボード」が必要で、適切なものがなければ、そこはIT DARTで開発しなければならないのではないか、というようなお話になりました。
そこには危機への準備という意味での平時運用(組織内でのコミュニケーションや、それを機能させるための準備)と、実際に危機が起きた時の緊急時運用(災害が)の切り分け、またパッシブなシステムとアクティブなシステムがあるはず、というような指摘もなされ、以前、丸山宏さんにうかがったレジリエンス・サイクルを思い返しながら、議論に参加させていただいていました。
創立に先立って、IT DARTでは実際に石巻で実地訓練を行っており、特に「通信が途絶えた時」ないし「通信がとても脆弱な場合」をどのように対応するかが大きな問題のようでした。例えば、ファイル共有サービスやニュースアプリのようにバッググラウンドで少しずつ自動的に必要な情報を取得するとか、小さなデータのやり取りで提供できるサービスが必要になるので、それに応じた設計が必要ではないかということでした。
冒頭で述べた「情報の空白地帯」が3次元的であるというのはこの辺りのことで、地図上の情報の過疎過密以上のことが現場にはあり、実際に現地に人が赴いて様々な場所で活動するには、通信網のこと、交通網のこと、食料や医療のこと、現地で使える道具やそれぞれの人の特性、それから性格なども含めて、様々に考慮することがあるなということを議論を通じて感じました。だからこそ、必要なことの作法やガイドライン、ポリシーのようなものと、合わせて、情報システムも考えられていかなければならないのだと感じます。
災害対応、という大きな括りで見た時に、そこで行われるアクティビティはあまりに様々です。支援の手をどのように交通整理して、有効に働かせるか、そのためには適切な情報が適切に届けられることが必要であることは言うまでもありませんが、しかし、同時にそれはとても難しいことでもあります。IT DARTが1つのハブ、交通整理で言うところの情報の「要衝」として機能するように、関係団体と協働しながら、今後その体制が形作られていくことに期待を感じて、会場を後にしました。
情報支援レスキュー隊 / IT DART (Disaster Assistance Response Team)
また今回の取材でユレッジとしてももう少し考えていかなければならないテーマをもらえた気がしていて、それは「ガバナンス」とか「コントロール」とか「マネージメント」と言ったこと。つまりネットワークを、システムをどのように防災の分野で機能させるべきなのか、ということです。ユレッジも3年目に入りましたが、少しこのことを意識しながら、引き続き、様々な分野の方々にご協力いただいて良質の情報をお届けできるよう進めていきたいと考えています。
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