地震大国・日本に住みながら、地震のことについて知らない人って実は多くない? そのひとり、文系女子・J子と一緒に、地震のメカニズムや今後起こりうる地震への備え方について一緒に学び、考えていきましょう!

icon_aA:独立行政法人防災科学技術研究所勤務の30代地震マニア男子。ニックネームは「アジー」。

icon_jJ子:静岡県出身、都内荒川区在住の20代文系OL。ひょんなきっかけでアジーと出会い、地震について学ぶことに。ミーハーで情報に流されやすいのがたまに傷。

第3回:Blabo! × ユレッジ コラボ企画 世界一地震が起こる日本を、世界一被害が生まれない国にするための防災アイデアレビュー

【A】前回ご紹介したJ-SHIS Mapで断層情報が見れる件、関西在住のお友達に教えてあげたんですよね? 反応はどうでした?

【J子】「へー、こんな情報が自分でも見れるんだ」って驚いてました。ちょうどマイホーム購入とかも考え始めていたそうで、場所選びで役に立ちそうって、すごく感謝されちゃいました。あと余談ですが、先日の淡路島での地震のときに、関西では初めて緊急地震速報が流れたんですって。地震よりも、そっちの音の方にびっくりしたって言ってました(笑)。

【A】なるほど。関西では、阪神・淡路大震災以来の大きな地震だったので、そうかもしれませんね。
さて、今回は、J-SHIS Mapから少し離れて、先日「アイデア会議室Blabo!」で募集した防災アイデアについて、J子さんと一緒にディスカッションできたらと思ってるんです。

【J子】あ、Blabo! ちらっと見ましたが、なかなか盛り上がってましたね。

【A】そうなんです。「世界一地震が起こる日本を、世界一被害が生まれない国にするための防災アイデアって?」というテーマで募集したところ、43ものアイデアと、それに対する157ものコメントが集まったんです。参加してくださったみなさん、ありがとうございました m(_ _)m

【J子】へー、すごい!

【A】中には、地震・防災の専門家でも思いつかないような斬新なアイデアもたくさんありました。その中から、私の独断と偏見で選んだ「これはいい!」と思ったアイデアをいくつか紹介したいと思います。

●集まった防災アイデアはこちらでご覧になれます↓

●これは実現したい!アイデア1

名称未設定

【A】ひとつめのアイデアはこちら。日本では、1981年(昭和56年)に耐震基準が大きく改正され(※)、それ以前に建てられた建物のことを「旧耐震(基準)」といい、日本全国に今まだ多く存在していると言われています。資産価値などとの兼ね合いでなかなか表に出てこない情報のため、国や自治体も正確に把握できていないんです。

一部の自治体では、改正前に建てられた木造住宅を対象に耐震診断を補助したり、木造旧耐震の「危険度マップ」や地震の揺れで発生した火災による延焼の危険性の度合いを示す「延焼マップ」を出したりしているところもあるようです。

・東京都の地震時における地域別延焼危険度測定(東京消防庁)
http://www.tfd.metro.tokyo.jp/hp-bousaika/enshoukiken/no08/chapter02.html

【J子】道を歩いていたら、突然地震がきて倒壊した建物の下敷きに……なんてことがあったらショックかも……。事前にわかっていたら、その家の前はなるべく通らないように気をつけることができますもんね。

【A】はい。本来人の生命を育むための存在である建物が、自分の命はおろか通りがかりの人や近所までも危険にさらす……なんてことはあってはいけないですよね。もし建物が倒壊しても、日本では、建築当時の耐震基準を満たしていたかで責任が判断されることも補修や改修が進まない原因のひとつであるように思います。いろいろ壁はあるのですが、これはぜひとも実現し、マップで見られるようになるといいなと思いますね。

ただ、ひとつだけ捕捉しておくと、旧耐震の建物だから危ないと、ひとつの基準だけで決めつけてしまうのはよくありません。とくにマンションにおいては、震災被害の度合いは、耐震基準よりも土地や地盤との相関性のほうが高い、と話す専門家もいます(※1)。建物の防災については、耐震基準含め、影響を与える地震の種類や土地、地盤情報などいろいろなデータから判断する必要があります。そんなときこそ、ぜひJ-SHIS Mapを活用してみてほしいですね。

※1 R—STOREの間違いだらけの住宅えらび 第7回「旧耐震と新耐震」
http://www.r-store.jp/special/page07.html

●これは実現したい! アイデア2

名称未設定

【J子】大胆な行動って、どんな行動……!? ちょっといろいろ妄想しちゃいました(笑)。

【A】とっさの判断で生死が分かれることもありますからね。そういった緊急時の状況を予め体験しておく、というのは大切なことです。とくに防災について適切な行動を学びたい場合には、こちらのアイデアにもあった「生きるテーマパーク」もよいですね。

名称未設定

テーマパークではありませんが、実際に防災を体験できる施設は、実は全国にいろいろあるんですよ。

・東京臨海広域防災公園
http://www.ktr.mlit.go.jp/showa/tokyorinkai/index.htm
・全国防災体験館一覧
http://bosailabo.jp/check/museum/

【J子】へー。こんなにたくさんあるんですね。しかも、大人も子どもも楽しめそうな内容になってる。アミューズメント感覚だけで終わらず、危機感を持って取り組めて、かつ記憶に残りやすい防災体験ができるとよいですよね。

●これは面白い!アイデア1

名称未設定

【A】このアイデアは、「Shake Out」のコンセプトに近いものがあるなと思いました。J子さん、「Shake Out」って知ってます?

【J子】いえ、もちろん知りません。

【A】「Shake Out」は、アメリカはロサンゼルスを中心に2008年に始まった新しい形の地震防災訓練です。訓練日時を指定して、科学的想定に基づいた地震シナリオに添って、「Drop! Cover! Hold on!」の安全確保行動を参加者一斉で行うというもの。2012年3月には、日本でも第一弾が開催され、去年一年で15万人以上の人が参加しました。

shakeout

【J子】サイトを詳しくみてみると、各自治体単位で開催されているんですね。今度近くで開催される場合には参加してみようかな。

【A】地震は、いつ、どこで起こるかわかりません。通学通勤中も含めて、いつどんなときに起こった地震でも対応できるよういろいろ想定して訓練しておけるとよいですよね。

●これは面白い!アイデア2

名称未設定

【A】このアイデアは、実現したらすごく便利だなーと思いました。地震が起こった直後って気が動転してしまって心を落ち着かせるまでには多少の時間が必要な場合もあります。そんな時に次の行動を導いてくれるようなものがあると助かりますよね。

【J子】先ほど紹介した「大胆な行動…」のアイデアにもつながりますが、地震直後、次にまずなにをしたらよいかを冷静に判断するのって、難しそうだなって思います。でも、揺れのあとにすべき行動って、シチュエーションによって結構違うような気もするのですがどうなんでしょう……。

【A】その通りです。なので、いろんな条件に合わせて、その場でその人にあったメッセージやアラートが出てきたらいいですよね。

【J子】それは、ものすごく心強いかも。

【A】J子さんはなにか気になるアイデアはありましたか?

【J子】そうですね〜。私は、マニュアル通りでやらせ感たっぷりの防災訓練ではなく、防災訓練をよりリアルに近いかたちで体験できたほうが印象に残るんじゃないかなと思って。「避難所運営ゲームHUG」の避難所運営シミュレーションはすごく興味を持ちました。

名称未設定

【A】避難所を経験したことがある人は多くないと思いますし、実際に当事者になったときにそれぞれがリーダーシップを発揮して、どう避難所を運営していくかというのを体験できるのはよいですね。

【J子】あと、多くの人が防災について考えるきっかけのひとつになりそうと思ったのが「防祭」。

名称未設定

各自治体ならではの防災情報を発信したり、お神輿ルートを避難ルートにしたり、防災にちなんだコンテストを企画したり。最近はやりのご当地グルメの祭典「B-1 グランプリ」のように盛り上げることができれば、人々の防災意識がより高まるのでは?と思いました。

【A】それはおもしろいアイデアですね。ほかにもここではご紹介しきれなかったアイデアがたくさんあるので、みなさんもぜひこちらのページで見てみてください。

そして、Blabo!では、新しいアイデア会議がスタートしています!

名称未設定

【J子】次は防災アプリがテーマなんですね。すでに多くのアイデアが集まってますね!私も考えてみて、あとで投稿してみようと思いますー。

【A】ぜひ!

耐震基準とは?

建築物や土木構造物を設計する際に、それらの構造物が最低限度の耐震能力を持っていることを保証し、建築を許可する基準。1981年に耐震基準が大きく改正された。改正後の新耐震基準では、震度5の地震ではほぼ建物に影響がでることはなく、震度6強から7の地震が起こっても建物が倒壊せず、中にいる人の安全が確保できる建物であることが要求されている。

関連記事

ユレッジからのお知らせお知らせ一覧へ

丸山 宏 / 統計数理研究所副所長・教授

「レジリエンス」。自己回復力などとも訳されます。このことはこの1年のユレッジのサブテーマでもありました。1年以上前にこの言葉を最初に僕に教えてくださったのが、統計数理研究所副所長・教授の丸山宏さんでした。2015年3月1…

詳細を読む

長谷部 雅一(はせべまさかず) / Be-Nature School スタッフ / 有限会社ビーネイチャー取締役 / アウトドアプロデューサー / ネイチャーインタープリター

誰しもが一度は「アウトドアって防災に役立つのでは?」と考えたことあるのではないでしょうか。アウトドアプロデューサー、ネイチャーインタープリターの長谷部 雅一さんにうかがったお話は、アウトドアの経験が防災に役立つ、という話…

詳細を読む

渡部 慶太 / (特活)石巻復興支援ネットワーク 理事

「復興は進んでいますか?」そういう質問をたまに耳にすることがあります。石巻復興支援ネットワーク 理事の渡部 慶太さんに寄稿いただきました。2011年以前と以降で東日本大震災は社会起業と呼ばれていた世界にどう影響を及ぼした…

詳細を読む

江口 晋太朗 / 編集者 / ジャーナリスト / NPO法人スタンバイ理事

今日、防災について考えるにあたって、欠かすことのできないものが「情報」です。編集者、ジャーナリストでNPO法人スタンバイ理事でもある江口晋太朗さんに、防災とジャーナリズムについて改めてお話をいただきたい、というのが今回の…

詳細を読む

小島 希世子 / 株式会社えと菜園 代表取締役 / NPO農スクール 代表

ユレッジでまだ食べることと防災のことについて扱っていないという時に、ご相談することにしたのがえと菜園代表取締役、NPO農スクール代表の小島希世子さんでした。著書『ホームレス農園: 命をつなぐ「農」を作る! 若き女性起業家…

詳細を読む

嶋田 洋平 / らいおん建築事務所 代表 / 北九州家守舎代表取締役 / 建築家

私たちは、自分の街のことをどのくらい知っているでしょう?家と駅とコンビニを結ぶ導線以外の道を通ったことはありますか?駅とは反対側の道を歩くとどんな景色が広がっているのか知っていますか?そして、災害が起きた時、またもう一度…

詳細を読む

松下 弓月 / 僧侶

僧侶の松下弓月さんに寄稿いただきました。ユレッジで、防災と心のケアについて、という難しいお願いに辛抱強く取り組んでいただきました。防災における仏教の役割を、現実的な解として、提示いただけたと思います。 こんにちは。僧侶の…

詳細を読む

高橋 憲一 / Hack For Japan スタッフ / イトナブ理事

震災から3年余りを過ぎて、ITと防災の分野で、ここまで行われてきたことを振り返って俯瞰し、これからの取り組みの見通しが効くようにしたい、それがHack for Japanの高橋憲一さんへのお願いでした。テクノロジーの未来…

詳細を読む

鈴木 さち / 東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士課程後期1年 / RAW

東北大学大学院工学研究科都市・建築学専攻博士課程後期1年の鈴木さちさんにRAW(リスク&アーキテクチャー・ワークショップ) 石巻をレポートいただきました。イベント・レポートのみならず、そこに至るまでの経緯も含めて、丁寧に…

詳細を読む

北村 孝之 / NPO法人ボランティアインフォ 代表

災害ボランティアセンターをご存知でしょうか。ボランティア希望者とボランティア団体をつなぐ、NPO法人ボランティアインフォの北村 孝之さんにユレッジでインタビューしました。災害時、災害後、求められる中間支援がボランティアの…

詳細を読む

畠山 千春 / 暮らしかた冒険家

2011年3月11日の東日本大震災、その後の原発事故。誰しも、とは言いませんが、一瞬「今、住んでいる場所を離れる」ことを考えた人は多いのではないでしょうか。ユレッジでは糸島シェアハウスに住む、暮らしかた冒険家、畠山千春さ…

詳細を読む

野田 祐機 / 公益社団法人助けあいジャパン 代表理事

公益社団法人助けあいジャパン 代表理事の野田 祐機さんに寄稿いただきました。全国47都道府県から2,000人もの学生を東北へ連れて行く「きっかけバス」。復興や防災を自分ごとにするための助けあいジャパンのプロジェクトです。…

詳細を読む

児玉 龍彦 / 東京大学アイソトープ総合センターセンター長 / 東京大学先端科学技術研究センター教授

東京大学アイソトープ総合センターセンター長 / 東京大学先端科学技術研究センター教授の児玉龍彦さんに、ユレッジでインタビューして来ました。近著、『放射能は取り除ける 本当に役立つ除染の科学』の内容を踏まえ、南相馬市を中心…

詳細を読む

小泉瑛一 / 株式会社オンデザインパートナーズ / 一般社団法人ISHINOMAKI 2.0 理事

株式会社オンデザインパートナーズ、一般社団法人ISHINOMAKI 2.0理事の小泉瑛一さんは、震災直後から東日本大震災の被災地、宮城県石巻市に入り、ほぼ常駐に近い形で、現地の方々をはじめとした様々な方々と一緒になってま…

詳細を読む

鈴木 良介 / 株式会社野村総合研究所 ICT・メディア産業コンサルティング部所属

株式会社野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部の鈴木良介さんに寄稿いただきました。鈴木さんは『ビッグデータビジネスの時代 堅実にイノベーションを生み出すポスト・クラウドの戦略』のほか、ビッグデータに関する執…

詳細を読む

三橋 ゆか里 / ライター・記者

ライターの三橋ゆか里さんは、日本のみならず、海外のWEBサービス、アプリ、スタートアップ事情にも精通しており、様々なメディアに執筆されています。ユレッジではテクノロジー企業やスタートアップが、災害時、また、防災に、どのよ…

詳細を読む

和田 裕介 / 株式会社ワディット代表取締役 / 株式会社オモロキCTO

和田裕介さんは、人気サイト「ボケて」を初めとした、様々なWebサービスを手がけるエンジニアです。和田さんには震災を受けて、自身が開発したWebサービスを振り返りながら、自分自身の経験と、これからWebサービスが防災に果た…

詳細を読む

渡邊 享子 / 日本学術振興会特別研究員 / ISHINOMAKI2.0

渡邉享子さんは、研究者でありながら、東日本大震災以降、ISHINOMAKI2.0のメンバーとして、石巻に居住しながら実践的なまちづくりに取り組んでおられます。その石巻での活動を踏まえ、社会(コミュニティ)と環境のデザイン…

詳細を読む

松村 太郎 / ジャーナリスト、著者

ジャーナリストの松村 太郎さんは、現在、アメリカ西海岸を中心に活躍されています。ユレッジには今年3月、被災地を取材したことを下地に、震災の記録と記憶の情報化について、またそこにある「学び」についての示唆をいただきました。…

詳細を読む

児玉 哲彦 / フリービット株式会社 戦略デザインセンター デザイナー

フリービット株式会社 戦略デザインセンター デザイナーの児玉 哲彦さんは、自社において、製品開発やブランド醸成、プロジェクトマネージメントなど様々な領域で、デザインをどう実際のアクション・プランに落とし込んでいくか、デザ…

詳細を読む

2013年04月09日更新

「ユレッジとは?」

加藤 康祐 / 株式会社イーティー 代表取締役社長 / プランナー

ユレッジは、日本の「揺れやすさ」と地震防災を考えるサイトです。 ユレッジは: 揺れの「ナレッジ」(知)が集まるメディアであり、 揺れについて学ぶ「カレッジ」(学び)であり、 揺れと日々の暮らしの関わりを考える「ビレッジ」…

詳細を読む

第3回:Blabo! × ユレッジ コラボ企画 世界一地震が起こる日本を、世界一被害が生まれない国にするための防災アイデアレビュー 【A】前回ご紹介したJ-SHIS Mapで断層情報が見れる件、関西在住のお友達に教えてあ…

詳細を読む

'