2015年10月02日更新
「まち」を「つくる」:COMICHI石巻 ー災害後のまちづくりを考える
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2015年03月15日
事前にご案内の記事も書きましたが、仙台では3月14日より国連防災世界会議が開催されています。今回、一般向けに用意されているいくつかのパブリックフォーラムのうち、ユレッジでは情報支援レスキュー隊(IT DART)のプログラムに参加して来ました。このことを中心にレポートさせていただきたいと思います。
災害急性期について
WebサイトによるとIT DARTとは:
情報支援レスキュー隊(IT DART)は、災害急性期に情報支援を行う専門チームです。災害時の復旧活動には情報の収集・活用・発信の仕組みを迅速に起ち上げなくてはなりません。私たちは、IT技術を活かして、この仕組み作りを支援しようと取り組んでいます。現在、本格稼働に向けたシミュレーション訓練および人材育成プログラムを開発中です。
とあります。災害急性期というのは、先日の丸山宏さんのシステムズ・レジリエンスの記事における、「レジリエンス・サイクル」で考えると「緊急対応」のフェイズに辺り、特に迅速な対応と的確な判断が求められるフェイズです。このタイミングで情報技術者が現場にどうコミットするか、という議論に興味がありました。
情報について
ITという言葉を持ち出すと、とかくテクノロジーの方に重きを置いて考えがちですが、「情報の収集・活用・発信」という言葉が使われている通り、発災後の混乱の中で、どうやって多くの人に正しい情報を届けるか、というところがプログラムの重要なポイントです。
ショートスピーチの中で宮川祥子さん(慶應義塾大看護医療学部准教授)がおっしゃられていた:
情報とは意思決定における不確実性を減少させるもの
という言葉が印象的でした。つまり情報を収集し、活用し、発信する過程において、情報の確度を高め逸せず伝える必要があり、そのためのチームがIT DARTと言えます。
グループディスカッションで議論したこと
グループディスカッションでは特に被災地支援のトピックに加わりました。例えば以前、和田裕介さんに「その時Webが出来ること」ということで、震災直後に立ち上げたanpiレポートについてご紹介していただきました。これは言うなれば災害急性期にエンジニアが東日本大震災で取り得た一つの解で、ある意味で後方支援であったとも言えます。という時に、では「災害急性期にエンジニアが被災地に入る」ということに本質的にどういう意味があるのか考えたい、ということが、このトピックを選んだ理由でした。
グループでは「人材」「モノ」「現地」というような軸があるのではという話になりました。
まずは人材。これはエンジニアをデータベース化して、それぞれの人の職能や専門性に加え、災害発生時にカバーできるエリアを事前に登録しておいて、メッシュ状に広範を見れるようにする必要があるだろうという話になりました。
次にモノ。具体的には情報を収集し活用し発信するためのテンプレートやプラットフォームなどです。これはとにかく5W1Hを明確にすることが必要という話になりました。一般に流れるフローの情報は、どうしてもそういう基本要素の何かが抜け落ち、かえって混乱を招きます。それを防ぐためのノウハウ構築がポイントになってくるという話でした。
そして「現地」。震災後、地元の新聞社が手書きの壁新聞を掲示したことが有用だったという話もありますが、最低限の通信環境があるならばIT技術者が編集者的な役割を果たしそういう情報を共有できる形にすることも可能ではないかと考えました。また、情報の混乱の中では、フローだけでなく、ある程度、時間単位を区切って、パッケージした情報を確度の高い情報として出していくような行程を経ることもかえって重要ではないかとも話しました。
さらには東京のような大都市で発災した場合、この情報の混乱は更に膨らむだろうと想定しました。近隣住民の交流も薄いとされる東京において、どのように情報のコミュニティリーダーとして機能するのか。世代間の隔絶をどのように埋めるのか。情報の信頼性をどのように担保するのかなどが議論になりました。
その上で、IT DARTがどのように機能するのか。点で見ればまだしも、面で見た時に情報の整理の全てを負えるのか。それが難しいのであれば、どのような機能に特化していくべきなのか。特にIT技術者が情報を扱うことのメリットとは何なのか、ということが定義されていくと、もっとその役割が固まってくるようにも感じました。
IT DARTとシステムズ・レジリエンス
今回、IT DARTは災害急性期にフォーカスしていると聞いた時に、前述の通り、レジリエンス・サイクルの緊急対応のフェイズの議論になることを想定していたのですが、実際は違いました。つまり「緊急対応時に実効力を発揮するシステム」を考える時には、その準備を考えるところから始まっていて、先のレジリエンス・サイクルの全体観における設計デザインのフェイズが今回のグループディスカッションだったとも言えます。
IT技術者のデータベース化は基本運用のフェイズでしょうし、今回議論になりませんでしたが、事前にどういう予測情報を参照するか、早期警戒をプロジェクトとしてどうやって行うかという議論もあるでしょうし、実際に災害が発生した時に何を号令に動き出すか、というようなポイントも出てくると思います。
その上で、この仕組みは東日本大震災のような「自然災害」を対象に限定せずとも機能し得る仕組みになるのではないかと感じました。テロやパンデミックなど、自然災害以外の有事においても機能し得る可能性があって、災害対策としての冗長性に期待できる、というのがITというある意味領域横断的な知見を特徴にしたチームの強みなのではないかと感じました。
まとめ
今回具体的にレジリエントなシステムをそのメソッドを使って考察することも試せ、IT DARTのプログラムに参加したことはとても良い機会だったと感じています。
世界的にも災害対策は、その直接的な対応だけでなく、社会システムのレジリエントな設計に議論の焦点が置かれているなという印象を、今回、国連防災世界会議の様々な展示を見ていても改めて感じました。
現地ではこの他にもイトナブによるKinectを用いた子供向けの防災知育ゲームや、Asia Resilience Forumではマイクロナノサテライトと呼ばれる民間でも実用可能な軽量で安価な人工衛星の防災への活用可能性など、興味深いアプローチを目にすることができました。
国連防災世界会議、18日までの開催です。せんだいメディアテークを初めとして一般な方々に開かれた展示もありますので、お時間のある方は是非出かけてみてください。そして具体的な取り組みについて、システムズ・レジリエンスの考え方で、その仕組みを捉えて整理しなおしてみてはどうでしょう、というのが、今回のユレッジからの提案でした。
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