2015年03月27日更新
「J-SHIS Web APIを使ってみた – その場所の揺れやすさを調べてみよう」
J-SHIS 地震ハザードステーションでは、様々な情報をAPIの形で提供しています。J-SHIS Mapで実際に利用している統計データを、一般の開発者にも使える形で提供しており、地震防災に役立つAPIとしては、代表的なも…
2014年05月24日
取材:加藤 康祐
現在、メインで利用されている地震計を見せていただきました。地震計には地表に設置するK-NETと、地中に埋め込んで計測できるHi-net、KiK-netがあります。
K-NET
K-NET(Kyoshin Net:全国強震観測網)は独立行政法人防災科学技術研究所(防災科研)が運用する、全国を約20km 間隔で均質に覆う1,000箇所以上の強震観測施設からなる強震観測網であり、1996年(平成8年)6月に運用を開始しています。地震被害に直接結びつく地表の強震動を均質な観測条件で記録するために、各観測施設は、一部の例外を除き統一した規格で建設され、自由地盤上(地表)に強震計が設置されています。また、各観測施設では得られた強震記録の特性を詳しく理解するために土質調査を行っています。KiK-net
KiK-net(Kiban-Kyoshin Net:基盤強震観測網)は、全国にわたる総合的な地震防災対策を推進するために、政府の地震調査研究推進本部が推進している「地震に関する基盤的調査観測計画」の一環として、防災科研が、高感度地震観測網(Hi-net)と共に整備した強震観測網です。KiK-net の観測施設は、全国約700 箇所に配置され、各観測施設には観測用の井戸(観測井)が掘削されており地表と地中(井戸底)の双方に強震計が設置され、鉛直アレーを構成しているのが特徴です。Hi-net
高感度地震観測施設は,人間には感じられない非常に小さな地震による揺れまでキャッチするために, なるべく静かな場所を選んで深さ100m以上の観測井戸を掘削し,その底部に観測計器を設置します。 小さな地震は発生する頻度が非常に高いために,このような観測を実施することによって, 各地域における地震の活動度や地震の発生様式,地下の構造等を精密に把握することが, 迅速にできるようになると期待されています。
つまり、K-NETとKiK-netによる強い揺れの全国的な観測網(強震観測網)と、Hi-netによる微弱で頻発する揺れの観測網(高感度地震観測網)の2つを持っているということです。僕らが日常的に体験しているのは、東京震度4、横浜震度3というような、エリア別の震度ですが、実際は網の目のように張りめぐされたまさに観測網が、継続的に日本の「揺れ」の情報を常時モニタリングしていて、それらが地震発生時のハザードの発信や、中長期的な被害リスク評価のための材料として、蓄積されているのです。
防災科学技術研究所の屋外に設置されたK-NETの写真です。
全国の観測網が計測したデータをモニタリングできる部屋も見せていただきました。つまり、防災科学研究所の観測網は、即時の対応のための観測データの取得と、中長期的な防災対策のための観測データの収集という2つの役割があり、強震と高感度、異なるタイプの地震計を活用しながら、日本の「揺れやすさ」をモニタリングしているのです。
皆さん、地震ザブトンをご存知でしょうか。屋内で地震動を再現できるシミュレーターです。地震と地震動の違いについては以前のユレッジの記事を参照ください。簡単に言うと、地震を観測した、その場に自分がいたとして、その場の揺れを観測データを元に再現し、体験できるシミュレーターが地震ザブトンです。
自走するシートが観測データに基づき地震動を再現し、眼前のプロジェクターにシミュレーション映像が映し出される仕組みです。振動の体感なので、シートに深く腰かけ、背面と頭をきちんとシートに密着させると、より忠実にその場の地震動を体感できるとご説明を受けました。今回、僕は以下の地震動を体験して来ました。
阪神淡路地震
直下型の地震です。横に大きく引っ張られます。40秒ほど。
新潟中越地震
直下型の地震です。小さく強い力で振られます。40秒ほど。
東日本大地震(茂木・地表)
海溝型の地震です。小さく強い揺れが来て、30秒後大きく揺れます。普通の地震と思っていると、思っていた以上に強くなり慌てます。98秒ほど。
東日本大地震(新宿・高層ビル50階)
海溝型の地震です。今まで経験したような小さく強く引っ張られる揺れがないかわりに、大きく揺さぶられます。船で揺られているような感覚。いつ終わるかわからず、不安を覚えます。地震がおさまっても、ビルは揺れ続けます。194秒ほど。
※上記はあくまで個人の体験に基づく描写です。
実際に体験してみると、それぞれに特徴があることがわかります。またそれらを比較すると、直下型・海溝型での違いや、地表・高層階での違いが浮き彫りになります。僕らは「大きな地震」というのを経験則として掴んでいる部分がありますが、一方で、「大きな地震というのはこういうもの」というのが、それぞれのいた環境・状況で大きく異なるであろうことを改めて思いました。横浜の仕事場で仕事していた僕と、六本木のオフィスで仕事していた仲間では、おそらく「揺れの体験」は大きく異なるはず。
またこの地震ザブトン自体にも改良点はあるだろうと感じました。現在は2Dでの動きですが、実際の揺れは縦にも来ますし、3Dでの動きが伴えば、更に忠実な再現が可能になるだろうと感じました。また視覚情報に関しては、Oculus RiftのようなVR技術を利用して没入感を作ることができれば、より体験にリアリティを持たせることができるのではないかとも。
こうして体験をしてみると、まだまだ「わかってない」ということと「わかった気でいることのリスク」というのは少なからずあるだろうと思いました。自分の経験が、ある意味で地震をステレオタイプ化してしまっている部分もあるだろうと思いました。東日本大地震からは3年という月日が流れましたが、まだ記憶に自分の経験が留まっているうちに、もう一度、近い人と当時の「揺れの経験」をシェアしてみても良いかも知れません。
防災科学技術研究所では他にも大規模な風雪の実験施設や、過去の災害に関わるあらゆる書籍や観測データを保管しているライブラリなどを見学させていただきましたが、今回はそのなかでも特に地震に関する観測データと、その活用法にフォーカスして、僕が見せていただいたものをレポートしました。
全国に張り巡らされた観測網、そこから収集された観測データ、それをどのように人々の防災や暮らしに結びつけたり紐付けたり啓蒙したりできるのか、そういう取り組みが今後も継続的に行われていかなければならないのだと思います。また、今はこの観測網、以外にも様々な防災にかかるデータがあります。例えば震災時に皆がどのように移動して家路についたかというような情報、ソーシャルメディアでどのようなことが話題になったかというような情報、以前、ユレッジでも野村総合研究所ICT・メディア産業コンサルティング部の鈴木良介さんに「ビッグデータで人は動くか?」として寄稿いただきましたが、様々なデータがマッシュアップされることによって、「自助高度化だけでなく、共助・公助」も成し得るのだと思います。
最近、読んだ本に寺田寅彦さんの『天災と国防』という本があります。「天災は忘れた頃にやって来る」という言葉を残した人です。残念ながら、防災は「風化」という言葉とリンクしていて、大きな自然災害が起きると、話題になり、出版物も増えるが、時間の経過と共に出版物も減っていくという話を、防災科学技術研究所のライブラリでもうかがいました。様々な取り組みが、いたずらに危機感を煽るでなく、次起こり得る大きな災害への備えとなるよう、ユレッジでも引き続きこの国の人たちの様々な取り組みにフォーカスして、お伝えしていければと考えています。
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