2014年02月21日

【加藤】1月にさきほど話したRace for Resilienceのアイデアソンを僕が取材して来たのだけど、元々それは開発途上国の防災に対してITで何ができるかということだったんだよね。インドネシアの班、マレーシアの班というように、担当する国が決まっていて、アイデア出しをやるんだけど、基本的にはそういうところってITが未成熟だったりする。スマホの普及率とか、インフラの脆弱性とか、その時にどういうことができるのか、また、災害はその国によって変わるから、地震が多いのか、河川の氾濫なのか、ハリケーンが毎年来るのか、それはグローバルに広げるから視えることだけど、日本の国内だけを見たってそういう部分はある。

【畠山】やっぱり防災やる時は、できるだけシンプルなモノとか方法があってると思うんですよね。だから、何もモノがない途上国のアイデアとか、すごく良いかも知れないです。3.11のときは電話のかわりにtwitterとかが大活躍したので、そういうツールももちろん大切なわけですが、みんながみんなそういう機械が使えるわけではないと思うんです。たとえばこの辺の高齢の方は携帯電話を持ってない人も多いですし、そもそも私が住んでいる家は電波が届かないです。おそらく連絡を取るとしたら固定電話だけど、固定電話って家にいる時しか出ないから、畑とかに出ていたら連絡が取れません。そういう時に何で連絡するかと言ったら村内放送。ここはコミュニティがしっかりしていて、お宮行事や海岸清掃の案内が全部村内放送から流れてくるんです。多分、この場所は何かあったらきっと村内放送が入るんだろうなと思います。

【加藤】でも全く同じ話を開発途上国の話でもしていたよ。教会を起点に情報を流すとか、川伝いに狼煙みたいに伝えていくとか、インフラが限られていると、普段使っている通信手段を活用しようという話になる。

【畠山】スマホとかを筆頭に、現代技術って電気ないと動かないじゃないですか。3.11のときとかも電気が来ないだけでそういうものが役に立たなくなったときありましたよね。

【加藤】そこが千春の防災の出発点だよね。

【畠山】そういったものに頼りすぎずにいかに生き延びるかということだと思っています。

【加藤】僕も東北で地震があったという一報は、たまたまラジオを聴いていた近所のおばちゃんに教えてもらったからね。インターネットじゃなかった。「コースケくん、東北で地震らしいわ」という。

【畠山】アナログですね。

【加藤】実家だからご近所付き合いがあったのと、地震と同時にうちの地域は水道・ガス・電気、止まったから。

【畠山】そうですよね。防災ってすごくシンプル。

【加藤】シンプルというのともう一つ、「うまくやっても褒められないんだけど、失敗すると怒られる」ということだったりして、人の命に関わるからそうなんだけど。消防も警察もそうだろうし。多分、千春の防災も何も起こらなければ、なんの役にも立たないと言えば、そうとも言えるのだけど、逆にこれからの時代はそれだけじゃなくて、防災対策をやっていること自体、準備しているということ自体が、世に広まっていくことによって、意味が出てくるのではないかと思う。

【畠山】防災のことをやっておいて損はないと思いますよ。さっきも防災とコミュニティづくりはすごく似ているというお話をしましたけど、お互いがどう助け合うかということをずっと話し合うわけですから、防災をやればやるほど、絆が深まると思っています。

【加藤】それは災害起こる起こらない関係なく、ということだ。だからコミュニティが直面し得る課題の一つとして災害を抱えていて、そこをどうしようかと話し合っていくこと自体がコミュニティの力になるってことだろうな。

【畠山】原発事故が起こったらどう逃げますか、というアンケートが回ってきた時、胸が苦しくて。お宮行事のときに皆で公民館に集まって、ひとしきり仲良くご飯食べたあとに、さらりと最後にアンケートが配られたんです。豊かな自然があって、美しい棚田があって、温かい人たちが住んでいるこの地域には、原発のことなんて忘れてしまいそうなくらい穏やかな暮らしがあるんです。でもこの日常の中に、間違いなく原発があるんだなって実感して。ここの人たちは「先祖代々受け継いだ土地だから」ってこの場所をとても大事にされているんです。もしここになにかあったら…と考えるだけで、胸がギューッとなって、悔しいなと思います。

【加藤】なるほど。

【畠山】でも、ここに住むからにはこの問題とずっと付き合っていかないといけないですよね。だからこそ、悔しいとか悲しいとかそういう気持ちだけで取り組みたくなくて。避難訓練と家族旅行を一緒にしてみたり、他の地域コミュニティと提携してみたりと、あくまでも楽しみながら防災が出来たら良いなと思っています。今回お話して、改めて私たちもしっかり防災に取り組んでいこうという気持ちが強まって良かったです。それとやっぱり、私の言いたいことは、先に挙げた堀潤さんの映画を観た時にFacebookページに書いたことが全てかなと思います。

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畠山 千春 / 暮らしかた冒険家

新米猟師・ライター。311をきっかけに大量生産大量消費の暮らしに危機感を感じ、自分の暮らしを自分で作るべく活動中。2011年から動物の解体を学び、鶏や合鴨を絞めて食べるワークショップを主催。2013年に狩猟免許を取得し近くの山で狩りを始める。獲物の肉を食べるだけでなく、軟膏、薬作りや皮なめしもあわせて勉強中。現在は食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る糸島シェアハウスを運営している。
http://chiharuh.jp

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