2015年08月09日更新
「情報の空白地帯」を埋める:一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)創立総会レポート
2015年3月、仙台にて開催された国連防災世界会議でIT DARTのワークショップに参加してユレッジにてレポートしました。8月8日、一般社団法人情報支援レスキュー隊(IT DART)が創立され、その総会とワークショップが…
2014年02月21日
【畠山】やはり逃げるだけじゃ暮らしていけないですからね。以前、Facebookページにも書きましたけど。
【加藤】読んだけど。
【畠山】堀潤さんの「変身」という映画を観て、心揺さぶられてしまったんです。あの中に福島原発の近くに住んでいた人のコメントが出てくるんですけど、それがどうしても私たちとかぶってしまって。私たち家族もそうだし、私この集落の人達も本当に大好きなんです。もし大好きな人たちがこういう状況に立たされてしまったらと思うだけで涙が止まらなくて。それもあって、何かあったときに身近な人をちゃんと守れる人になりたいし、そういうコミュニティをきちんと作りたいという気持ちが生まれたんです。そのためには、いざという時にどういう行動を取ったらいいかと普段から皆で話したり、考えたり、あとは自分たちが考えていることを情報発信して、周りの人と交流したりすることが大事だと考えています。
【加藤】普段から、今日もそうだけれど、シェアハウスを会場にマルシェをやったりしていると、当然地域の人と繋がっていくだろうし、今日も北九州の人とか耶馬溪の人が来て僕もお話させていただいたけれど、皆さん少なからず考えておられるよね。
【畠山】勿論、うちも受け入れができるようにしたいと思います。それに、残念ながら原発は美しい自然が沢山ある場所にこそあるんです。だから、田舎に移住した人や、もともとそこに住んでいた人でも、原発が心配という人がいるんじゃないかと思うんです。そういう人達と繋がりながら、前向きな防災のネットワークが作れたらいいなと、今は思ってますね。
【加藤】原発の話はクリティカルな話だけど、でもそうじゃなくても何かあった時に、同じ仕組みが使えるよね。
【畠山】そうですね。強いコミュニティを作っていくことは、防災だけじゃない効果もたくさんあると思います。特に原発30km圏内って、特別だと思うんです。ここでしか感じられない気持ちもあると思うし、それは他の地域の30km圏内の人たちとも分かち合えるものなんじゃないかなと思うんです。だから、他の地域の人達が防災に関してどういう対策を練っているのかな、というのはすごく気になっています。私たちはシェアハウスとしてそういう仕組みを作ろうとしているけど、他の人達はどうしているのか、ということをもっと知りたいなって思います。
【加藤】なるほど。被災地の石巻だって、近くの女川には原発があるし、福島に限った問題じゃないよね。あと、防災ってさっきの話に戻るのだけど、暮らしの一部だと思うんです。個人においては。だから千春だったら、狩猟やります、文章書きます、アクセサリー作ります、畑もやります、プラス防災、というのが「暮らし方冒険家」の冒険する対象の一つとして、本来的にはあるべきなんじゃないかなあと思うんだよね。
【畠山】本当にそういうつもりでやっています。自分の暮らしを自分で作る、その一つです。それなしではここでは暮らしていけないので。
【加藤】逆に他の人に同じことをやって、と言ってもなかなか難しいのだと思う。だけれど、僕がなぜユレッジで千春にインタビューしたくなったかというそもそも論は、結局、昔、というか3年前に震災があった時に、僕も含めて、一度は皆、避難しなきゃいけないんじゃないかとか、今の家を離れなきゃいけないんじゃないかとか、考えた瞬間はあったと思うんだよね。ある人は本当に動かなきゃいけないと思っただろうし、ある人はまあ大丈夫だろうとなったと思うし、ある人はもういいやとなったかも知れなくて、色々な人がいて良いと思うんだけど、ただ、動いたらその後どうなったかという、経験則というのを他の人にも渡してあげるべきだと思っていて、それは動け、という話ではなくて、そういう選択肢も取り得るとか、そういう暮らし方があるとか、どういうことを動いた人が考えているかというのは、もう少し広まっても良いのかな、と思っていたんだよね。
【畠山】そうですね。この話を悲壮感溢れる感じにはしたくないと思っています。これだけ真剣に話していますけど、鹿児島に家族旅行に行った時も楽しかったし、原発を見学しに行った時もなんだかんだすごく勉強になって、良い機会だなと思いました。防災って、いざという時のための知恵ですけど、そこに皆で向かっていく過程にもすごく意味があるなと思っています。
【加藤】学習のプロセスってことだよね。
【畠山】そうなんです。こうやって皆で避難先を決めたりとか、ヨウ素剤を皆で手に入れたりとかすることで、お互いのことをすごく大事に思っているというのが伝わってきて、すごく嬉しいというか、幸せを感じます。
【加藤】コミュニティの繋がりを実感できる。
【畠山】そうですね。これだけ皆真剣に考えてくれている、自分も周りの人のこと本当に好きだから、やっぱり一緒にやっていきたいと思うし、そういう繋がりを感じることができる良いきっかけの一つだったなと思っています。
【加藤】前に話したときはコミュニティと言いつつも、どちらかというとヒューマン・スケール、ということだったと思うんだよね。今回、聞いている防災の話というのは、スケールが本当にコミュニティ単位になっている話だよね。コミュニティ・スケールというか。
【畠山】なるほど。ちょっと広がったってことですね。自分一人じゃできないですもんね。
【加藤】そうだし、1人の人間が鹿児島に避難しますとか、高知に避難できる約束がありますというのと、10人がまとめて避難できます、という話では全然お互いの負担も違うだろうし。そういう意味じゃ良い環境に動いて考えることが出来ているんじゃないかな。
【畠山】確かに1人と10人じゃ全然違いますよね。
【加藤】違うよね。
【畠山】だからやっぱり仕事があるところとか、そういうことも考える必要があると思います。
【加藤】情報の発信も色々あって、だから千春が話してくれているような防災も暮らしの中の一つとして扱ってもらえるように、日本にいる色々な人達に話してもらえるようになれば、良い議論が広がっていくのかなと思うよね。
【畠山】防災楽しいですよ。サバイバル能力が必要とされるので。なんとなく自分に自信が付いてくるというか。どう生き延びるかというのを考えるのは、人間の本能のような気がします。
【加藤】自分で安心材料を作っていく作業ということだよね。
【畠山】そうですね。それがあるから、今すごく幸せに暮らしていられるし。
【加藤】そうだよな。安全神話の崩壊、と言われたら、自分で作るしかないもの。
【畠山】100%安全なんてないんですけどね。「安全」を人任せにせずに、いかに自分ごととして考えられるかだと思っています。何かあった時に自分たちでどう乗り切るか。それは防災だけじゃなくて、色々なことに共通することだと思います。
【加藤】話を聞けて本当に良かったというか、なかなか個人で暮らしの中でそういうことに取り組んでいますというのは、フォーカスされづらい、トピックになりづらいことなので。
【畠山】でも、このシェアハウスに来たからできることがすごくあるなあと思っています。
【加藤】そうだと思うよ。1人だけ変わったことを言っているぞ、ってなっちゃったら、やっぱり成立しない話だろうし。
【畠山】私たちは関東から移住して来た人が半分。半分九州、半分関東なんです。だからすごく良いバランスで、九州の人達は、3.11の経験が少ないから、私たちの意見が新鮮みたいなんです。私たちは自分たちで感じていることがあるからそれをシェアしながら、じゃあどういう防災ができるかという話をしていて、それはすごく良いバランスだと思います。
【加藤】逆に言うと、僕が九州来て毎回勉強になると思うのは、例えばこちらのNPOの方にご挨拶した時に地震防災のサイトをやっていますと話した時の感じとか、あと、以前の糸島シェアハウス訪問で一緒になったエコビレッジの方と話していたら、移住先を探しに来たんですか?と聞かれたんだよね。まさか、移住先を探しに来ているつもりはなくて来ているわけだけど、よくよく状況を分析すると、そういう考える方が自然なのかも知れないなと思った。
【畠山】移住先を探している人達、多いですね。そういう相談もよくあります。ただ、うちのシェアハウスは一緒の家に住んでるだけじゃなくて「暮らし」そのものをシェアしている家なんです。自分の特技を活かしながら、ここの暮らしを一緒に作っていける人が良いですね。今は料理人もいるし、音楽は音楽家がいてくれるので、次は率先して家を直してくれる大工が欲しいです。もちろん、作業はみんなでやりますよ。
【加藤】雨漏りしても困るしね。
【畠山】そうなんです。ガラスが割れているところを埋めたり、壁に漆喰を塗ったりとちょくちょく改修はしているんですけど。やっぱり一人大工仕事好きな人がいたら、色々なことが進むんじゃないかと期待しています。
【加藤】そういう一人一人が役割を持つことが、自ずと防災に強いコミュニティ、ということにも繋がっていきそうだよね。防災に強いとまで言わずとも、アクシデントに強い。やっぱり、自分の暮らしを自分で作るための力、そういうものが一人一人にそれぞれ必要だってことなんだろうな。
【加藤】それともう一つ、田舎と都会では防災に対して考え方も違うんじゃないかと思うんだけど、その辺どうかな。
【畠山】ここのように高齢者がたくさん住んでいる地域と、ここからちょっと先に行った若者たちが住んでいる都市の防災って全然違うものだと思うんですよね。働き方も違うし、移動手段も違うし、若者とお年寄りだったら体力も違う。でも、それが全部同じようなシステムに当てはめられちゃっているような気がしているんです。地元の人たちがどういう人たちで、どういった逃げ方や防災対策が必要なのか、まずは知ることが大切なのかなと思いました。
畠山 千春 / 暮らしかた冒険家
新米猟師・ライター。311をきっかけに大量生産大量消費の暮らしに危機感を感じ、自分の暮らしを自分で作るべく活動中。2011年から動物の解体を学び、鶏や合鴨を絞めて食べるワークショップを主催。2013年に狩猟免許を取得し近くの山で狩りを始める。獲物の肉を食べるだけでなく、軟膏、薬作りや皮なめしもあわせて勉強中。現在は食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る糸島シェアハウスを運営している。
http://chiharuh.jp
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