2014年02月21日

【加藤】ははは。逆にそこから防災の話をしていきたいと思っているのだけれども、結局、今、僕も含めて、僕の同年代がどうやっているかというと、基本的に大きく稼いで大きく使う、という生活だと思うんだよね。そういう暮らし方って、会社の倒産や解雇などアクシデントが起こった時になかなか対応しづらい。勿論、色々対策はあるにしても。一方で、割と、小さく稼いで小さく使うという生活をしていると、それはそれで大変なことはたくさんあるだろうけど、ある種アクシデントに強いと言える気がしていて、防災の仕事に関わっていてよく聞くのは、完成された都市システムは災害に対して弱い、ということ。

【畠山】完成されたシステムだと乗っかるしかないから、というような気がしますね。やっぱり自分たちで自分たちのものを作るというのが、足腰が強い防災なのかなと思います。

【加藤】防災という話をした時に、今も都知事選をやっているけど(取材は2014年2月8日に行いました)、仕組み、ないし、制度としての防災の話になりがちだと思うんだけど、一方で、防災はひとりひとりの問題意識が大事です、という話がある。だけど、なかなかそれを都市生活でイメージしづらくて、むしろ千春の防災に強いコミュニティ、集落作りをしたいという話は、いわゆる「自助」の方に近いのかなと思う。個人に力を蓄えていくというか。

【畠山】結局、大きい物に頼った暮らしから一歩進みたい、というのがこのシェアハウスのテーマでもあって、だからエネルギーと、仕事と、食べものを自分たちでできるだけ作る。それは周りがどんな状況になっても、自分たちの力で楽しく生きていけるようにと思っていて、その中に防災も含まれているわけですよね。やっぱり生きて行くためには防災していかないと。

【加藤】生き残るためには。

【畠山】生き残れないですよね。それはすごくあります。

【加藤】ただ、面白い話があって、僕は今日糸島に来ているわけだけど、一方で、東京でハッカソンをやっています。ハッカソンと言うのは、ITのエンジニアとか、デザイナーとか、プランナーとかが集まって、1日2日でプロダクトを作る。今行われている、Race for Resilienceというハッカソンは、開発途上国に向けた防災対策のハッカソンなのだけれども、Resilienceというのは「しなやかな」とか「自己修復」みたいな意味。あと、最近の研究で、特に震災の後にその意義が強まったと思うんだけど、Systems Resilienceというのがあって、システムが想定外のアクシデントに対してどういう風に自己回復していくかみたいなことを、今までのガチっとしたピラミッドの括りで考えるのではなくて、人間や生物の自己回復力を考慮しながら、どうやってシステムを構築していくか、というのが注目されている。ここで言っていることが、実はこれまでの話に似ているというか、今まですごく大きな括りを見てきた人たちも、そういう柔軟なことが必要だと思っているし、逆に暮らしの中からでも、そういうものを積み上げていくというアプローチもあるだろうし、大きな単位でも小さな単位でも向かっているところは同じなのかなという気がするんだよね。

【畠山】コミュニティづくりと防災ってすごくリンクしていると思うところがあって、コミュニティがしっかりできてれば防災って自然と出来てしまうような気がするんです。例えば私が3.11に経験した買い占め問題とか、周りに頼れる人がいないから、食べものをたくさん自分の手元に残そうと思って、起きてしまったことだと思うんです。一人一人が適量な量を分ければ足りたものを、買占めしたから物が足りなくなってバランスが崩れてしまった。もし、周りに頼れるご近所さんがいたら、きっとそんな行動はしないだろうし、やっぱりコミュニティがあって、ちゃんと信頼関係が作れているということで、色々なことが乗り越えられるのではないかって考えています。ちなみに我が家は原発30km圏内なので、防災のことも結構考えますね。

【加藤】玄海原発。

【畠山】そうなんです。原発から避難してきたのに、結局原発の傍に住むことになりました。糸島がすごく良いところで、大好きで。いずれにせよ日本全国どこに住んでも原発はあるわけですし、どうせ逃れられないならここで楽しく暮らしていくために防災をしっかりしていこうと思ったんです。まず、ガイガーカウンターを導入して定期的に線量を計測したり、やはり30km圏内なので、いざという時のためにヨウ素剤を用意したり。今、ヨウ素剤は住人一人一人が持っているんですよ。ゲストが来た時のためにゲスト用のもちゃんとあります。だから加藤さんの分もあります。ここはゲストが来ることが多いので。

それと一回、玄海原発を皆で見に行ったんです。うちのシェアハウスのメンバーと、見たいというご近所さんと一緒に。そこで原発というのがどういうものかというのを学んできたのですが、実際車で走ってみたら、すごく近いんです。こんなすぐ着いちゃうのか、と。物理的な距離を確認できたのも良かったですし、帰って来てから皆で話し合えたのも良い機会になりました。この集落も玄海原発の30km圏内なので、原発がもし爆発したら、というアンケートが回って来るんですよ。地域から。原発事故があった時にあなたは何で逃げますか?車、電車とか。いつもはどこで働いていますか?家にいますか?年齢は何歳ですか?障害を持っていますか?車持っていますか?避難先はどこにしますか?……などなど。一応、うちの地域の人達は、逃げてくださいという特定の避難場所があるんですけど、それは一箇所だけなんです。放射性物質って、風向きの影響も受けますから、避難先が一箇所だけというのはやっぱり心配なんですよね。そもそも車社会の糸島で原発事故が起こったら、多分すぐには逃げられないと思うんですよ。だから私たちはヨウ素剤を買って、車の窓を閉めてゆっくり逃げる、というのが皆で出した答えでした。そこで、万が一のときのことを考えて避難先をFacebookで募集したんです。

【加藤】見ました。

【畠山】鹿児島や熊本とか。いざという時に逃げられる避難先を見つけようということで、皆で鹿児島に旅行に行きました。それは家族旅行でもありつつ避難訓練でもあって。やはり事故が起きた時に皆がどこにいるかわからないので、集合場所だけ決めておいて、後は皆各自でそこを目指す。もちろん、ヨウ素剤は確保しておくようにしています。細かいことはまだ話し合い途中なので決められてないのですけど、でも少しずついざという時のための対策を今のうちから考えておきたいと思っています。それと、自分たちが受け入れてもらうだけではなくて、他のところでもし何かあったらうちに来て良いですよ、という提携もしたいと思っています。

【加藤】それ大事だよね。

【畠山】ありがたいことに、そのときに何箇所からか避難先として手を挙げていただきました。これから家族旅行という名目で、避難先を少しずつ増やしていきたいですね。そしてゆくゆくは、そこでの出会いを活かしてお互いのコミュニティが避難しあえるようなネットワークを作れたらいいなと考えています。テーマは防災ですが、あくまでもゆるく、楽しい形で取り組んでいきたいんです。
そのために、最初にうちのシェアハウスの情報を公開しました。避難先を募集するときに大切なのは、まず私たちが「食べれて、寝れて、仕事がある」ところじゃないかと思うんです。やっぱり、避難するようなことになったらしばらく糸島には戻って来れないだろうから。

玄界灘で眺める夕景。

玄界灘で眺める夕景。

【加藤】ワーストケースで、ってことだよね。

【畠山】そうです。だから、そこにしばらくお世話にならないといけないと思うんです。そういう時にずっとお世話になり続けるんじゃなくって、きちんと仕事ができるところだと良いと思うんですよね。うちの住人は、猟師とか料理人とか、農業やっている子とか、音楽家とか、写真家とか、手に職があるメンバーが多いんです。だからそれぞれのプロフィールを全部公開して、こういう人たちが仕事できるような場所を探しています、と発信しています。今は皆で畑をやっているので、基本的に皆、畑作業なら出来る。だから農家さんで人手が足りないところとか、そういうところだったら役に立てるかもなあ…と思って。避難先に依存するのではなくて、お互いが自分たちの得意分野を活かして支え合えるような、持続可能な避難ができたら理想だなって考えています。

【加藤】それは大事だと思う。持続可能な避難みたいな話になるのであれば、仕事あるからこの場所離れられませんという状態だと、それで強制退去となった時に、どうしても後手の行動になってしまうと思う。すごく未来の話を自分たちで先に決めていこうとしているわけだよね。

畠山 千春 / 暮らしかた冒険家

新米猟師・ライター。311をきっかけに大量生産大量消費の暮らしに危機感を感じ、自分の暮らしを自分で作るべく活動中。2011年から動物の解体を学び、鶏や合鴨を絞めて食べるワークショップを主催。2013年に狩猟免許を取得し近くの山で狩りを始める。獲物の肉を食べるだけでなく、軟膏、薬作りや皮なめしもあわせて勉強中。現在は食べもの、エネルギー、仕事を自分たちで作る糸島シェアハウスを運営している。
http://chiharuh.jp

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